ランサーズのコンペで発注者が困る点【駆け出しデザイナー向け】

駆け出しデザイナーが実績づくりで利用するランサーズ

ランサーズは気軽に仕事の受発注ができるクラウドソーシングで、デザイン・プログラミング・ライティングなど、さまざまな業務の依頼が飛び交っています。バリバリ活躍中のフリーランスだけではなく、駆け出しデザイナーが実績づくりのためにコンペに参加したりすることもよくあります。

クライアント(発注者)の無茶振りに対する愚痴や、参入障壁の低さから起きる価格崩壊を嘆く声をよく目にしますが、クライアント側から見た話というのはあまり見かけません。

ちょうど現職の実務でランサーズでクライアント側としてコンペ案件をやる機会があり、その中で「こういう提案多いな、どれも同じだな」とか「こういう提案、デザイナーとしてはやりがちだけど、やられると困ることあるんだな…」など気づいた点がいろいろあったので、せっかくなので駆け出しデザイナーの方にも参考になるようにメモを残しておこうと思います。

私が携わった案件についての話になるので限定的な話もありますがお付き合いください。

ロゴのコンペで土俵に上がらなかった提案の例と解説(というか発注者の心境)

バナーやロゴなどの単体の依頼は長期拘束されず、「画像一枚で見た目勝負できてかんたんに作れるし数打ちゃ当たる」ように思えるので駆け出しデザイナーはこういう依頼に応募しがちですが、実際は画像の見た目だけで選ばれるほど簡単じゃないのでなかなか採用されないということもあるかと思います。

具体的な例で見ていきましょう。

依頼内容:

  • 弊社のクライアント企業のコーポレートロゴ作成
  • めっちゃBtoBの工業系企業(サイトURLあり)
  • 安定、老舗、信頼感
  • カラーはエメラルドグリーン(参考資料あり)
  • ワードロゴ
  • ベースにしたフォントの選定理由など教えてくれると検討しやすい
  • シンボルに凝るよりシンプルにしてほしい
  • 名刺などにも使用するので、RGB値とCMYK値の両方を提示してほしい

かんたんに書くとこんな感じです。(実際はもっと丁寧に書いてます)
募集終了まではランサーの提案は非公開。他人の案をパクることはできません。

弊社が選定するのではなく、最終的に選ぶのは弊社のお客様であるというところが結構ポイントです。
ここを説明せずにただやってほしいことだけを記載している発注者も多いと思いますが、裏側は実は、ということもあります。

間に発注者(今回でいうと弊社担当者)が入っているので、情報の伝達は難しく、ランサーにとってのエンドユーザー(クライアント企業)の温度感がわかりにくいという側面があります。

発注者の心境についてぶっちゃけトークをしていきます。

テイストが企業イメージと合っていない

ひどいこと言いますが、明らかにデザインの勉強をしていなさそうな、知識も経験もないセンスない提案だな、ってなるクオリティの低いものが出てくることがあります。
パパッと図形並べただけだろ、みたいな。
余白どうなってんの。
なんで歪んでんの。
みたいな。

これはクライアントに提案する前に私が弾いてしまうので選定の土俵に上がりません。
(というかクライアントに持っていっても選ばれないだろうし)

BtoB工業系企業でワードロゴだって言ってるのにスリーエフのロゴみたいな図形出してくるなよ。メルヘンかよ。

まずデザインの勉強をしましょう。あまり知らない業界の企業の案件は、同じ業種のほかの企業をいろいろ調査してみましょう。

頼んだことをやってくれない、その1

上記でも言ってますが、発注者は「ワードロゴ」を選んでいます。
ちなみに発注者が依頼時に見る画面はこれ。

方向性が決まっていないクライアントはここから3つくらい選んでね、と言われますが、今回はワードロゴのみを選びました。
ワードロゴの見本のとおりの、ロゴタイプのみのロゴがほしかったからです。

それなのにこういう感じの提案がいっぱい出てきます。

これは「抽象ロゴ」ですね。ほかにも「頭文字ロゴ」「ピクチャーロゴ」にあたるものもたくさんありました。
何が困るって、この種類のロゴを出してくる人の多くが、シンボルには力を入れているけどロゴタイプはてきとー、というのが多かったんですよね。

ちなみにこっちのパターンだとまだロゴタイプ部分も字詰めされてたりしてマシなのが結構ありました。

ランサーズの表記では「文字を中心にデザインしたロゴ。絵や図を含む」とあるのでシンボルがあること自体はマイナス評価にはなりません。
クライアントからダメって言われなければそのまま使えるし、ダメって言われてもシンボルを消せば使える。

でも「抽象ロゴ」「頭文字ロゴ」「ピクチャーロゴ」のように、シンボルがんばりました!みたいなのは、そもそも要件と違うので土俵に上がれません。

発注者がワードロゴのみしか選んでないということは、つまりそういうことだ、という裏側の事情がはじめてわかりました。

このロゴの種類について羅列・説明しているページを探したんですけどぜんぜん見つからなくて、あるのかもしれないけど、能動的に探しても見つからないんじゃランサーからしたら存在しないのと同じだなと思います。
制作物の種類・参考価格あたりにそういう説明あるかと思いましたがなくて、よくある質問で「ワードロゴ」と検索しても1件もヒットせずでした。

依頼内容の「ロゴの種類」欄は要注意。発注者が何を選んでいるかをよく確認し、要望を掴むことも大事です。そして実はもっと大事なのは欲しがっていないロゴを見抜くことです。

良かれと思ってシンボルも張り切って作っちゃいますよね。
私もランサー側で参加してたらそうやってたと思います。
実際シンボルなしのロゴタイプのみの案を出した人は30人中2人しかいませんでした。

デザインのこと知らないクライアントが「シンボルは不要」と明示できるかな?
ランサーズが用意してくれた見本の中から選んで「こういうやつね」って指示してるのに、わざわざ書かないんじゃないかな?

これ結構ランサー側からすると罠というか、頼んだ方もそのつもりで頼んでるのになんでこんなのばっかり来るんだ?ってなるので、誰も得しない気が…

頼んだことをやってくれない、その2

「話聞いてます?」みたいな、本当に依頼したことをやってくれない人も中にはいます。
しかしそこまで酷くなくても、線引きが難しい事柄もあります。
例えば今回でいうとこの部分。

名刺などにも使用するので、RGB値とCMYK値の両方を提示してほしい

これ、自分がデザイナーのランサーだったらどうしますか?
もしかしたら、割れるかもしれません。

私個人的には、「提案」の時点で「提示」します。
だって、「この色どうですか?」という提案をしないといけない場面だと思うからです。

でもランサーの事情として、自衛をする人もいるかもしれません。

  • 細かい色の調整なんてあとでできるから、採用されたら詰めましょう
  • 報酬の金額が安く、選ばれるかもわからないのにそんなにやってられない
  • プロが必死に考えて決めた色のコードだけパクられて他のランサーのロゴの色だけ変えるとかされたらたまったもんじゃない

などなど。

採用してから詰めましょう

だったら提案時にそうコメントしてくれないと、頼んだことやってくれない人だな、としか思われません。デザインの勉強をしたことがない人たちは、「色変えたらこんな感じかな〜」という画像が脳に浮かびません。色を変えたパターンをいくつか並べて見比べてはじめて、「こっちの方が好きかな」と気付けるのです。

いずれにしろ、提示しないのであれば提示しない理由とその後どうするつもりなのかを説明してくれないと、依頼内容ちゃんと見てないのかな?いい加減な人なのかな?と思われるだけでメリットはありません。

選ばれるかもわからないのに

勘違いしてる人もいますが「無償でご提案してあげる」じゃないんですよ。
コンペって、つまりは競技会ですから、報酬を獲得するために他者と競うんです。
金額が低いからと適当にやって選ばれなければ全部無駄です。
金額低いな〜割に合わないな〜と思ったら、そもそも応募しない。

コードだけパクられて

こういう懸念はあると思います。
カラーコーディネートをするという部分もデザイナーのスキルであって、能力を使っているわけですから、できたものだけ持っていかれるというのは嫌です。
それはわかります。
(まあ、その場合ロゴ本体のデザインがダメだったことの方をもっと気にするべきなのでしょうけど)

いずれにしても言えることは、「そんな事情、発注者はエスパーじゃないからわからない」ということと、「提示してくれないとそのカラーがイメージに合うか判断することができない」ということです。

発注者が依頼内容に書いていることをただ無視するのではなく、認識していることが伝わるようにしましょう。

とはいえ、コーポレートカラーがすでに決まっていてブランディングできている企業のロゴリニューアルでカラー指定があれば話はかんたんですが、今回のようにカラー自体から決めていかなければいけない場合、カラーの提案がないと選んでよいのかわかりません。

もし、「カラーはあとから出します」と言われても、

本当にちゃんと印刷向けの指定してくれるのかな?
この人の画面で見た色だけで決めてないかな?
ちゃんとカラーコディネートの知識あるのかな?

などなど不安材料がたくさんあります。

カラーの選定がいまいち

ランサーズで依頼を出す時の画面では、カラーの選択はこのようになっています。

とくに決まってない場合や、希望の色がある場合は30文字以内で入力となっています。

でもこれだと単に「緑系」としか表示されないので、クライアントの考える「グリーン」とは?というところを探らないといけません。

ランサーとしては何パターンかのカラバリを作って提案しないといけないので面倒くさいですよね。
たまたま自分が選んだグリーンが気に入られればいいですが、ロゴの形はよかったのに、たまたまその色が気に入らなくてほかのロゴを選ばれたらもったないです。
修正依頼をめちゃくちゃ出してくる発注者も面倒ですが、もし色がダメなだけならちょっと色変えるくらいやるのになー、言ってくれたらすぐ出すのに、と思ったりもします。

という作る側の事情はもちろんわかっているので、今回エメラルドグリーンの方向性を示すために、この辺の色がいいな〜というのがわかる資料をつけました。実際の資料には他社のロゴなども入っているので別の画像を例に出します。


カラーチャートはこちらから拝借しました。
Color-Sample.com

老舗工業系なので左の方のエコ感や、家庭的な暮らしっぽいイメージの優しい色合いではなく、ある程度主張の強い濃いグリーンで、古臭くないものということで、あらかじめこの色に絞ってお願いしました。

ところが中にはこういう感じの提案を出してくる方がいました。

え、これ、エメラルドグリーン? …水色じゃね?

わざわざ違う色を持ってこられて、それを修正依頼して必死にやりとりするほど発注者は暇ではありません。ほかにもたくさん提案があるし、初稿の時点でイメージに近いものから選ぶほうがずっと楽だからです。

もちろんカラー以外の意匠がめっっっっっちゃくちゃ良くて最高でもうこれしか考えられない!くらい素晴らしかったら、手間でもコメントして理想のカラーになるまでひたすら修正を繰り返してもらうかもしれませんが。

それはそれで嫌じゃんね。

発注者に具体的な要望がある場合にはそれに従った案を出しましょう。ほかのカラーを提案したいなら、まず要望通りのものを作ってからカラバリを提案しましょう。

モックは立派だけどロゴが見づらい

最近は画像をドラッグ&ドロップするだけでモックをかんたんに作れるジェネレーターがあります。
AdobeStockのモックを使う人も多いかと思います。

こういうやつです。

「こんなものまで用意してくれるなんて!」と、その提案力と画像作成スキルの高さを見込んで採用してくれる、という妄想をしているランサーもいるかもしれません。

妄想ですけど。

たしかに手軽にイメージ写真を作れるし、実際に使用したらどうなるかの参考になるし、モックがあることでマイナスイメージになることはありません。

問題は、「モックばかりで肝心のロゴが見づらい」場合です。

モックは利用イメージとしては役に立ちますが、数あるさまざまなデザインの中からどれがいいかを比較検討するにはぜんぜん向いていません。

発注者(その案件の担当者)自身がひとりでロゴを選定するならば、アピールになります。

しかし自社のお偉いさんに見せるとき、クライアントに見せるとき、ランサーズの画面をそのまま見せたり、まして検討するメンバー全員に1枚ずつ添付ファイルをダウンロードして確認してもらうことなどほぼ無理です。

だいたいパワポとかにほかのロゴと一緒に並べてこれはこういうデザインです、という説明をつけて情報をまとめて提出することになります。
もしそのロゴをプレゼンの土俵にあげるなら、他のロゴのモックも必要になってしまいます。
提案してくれたランサー全員に「こういうモック写真ほしいんだけど?」と言って回るわけにもいかないので、提案しづらいからこのロゴは弾くか…となってしまうんです。

パクリ防止など自衛のために提案時はそのまま利用できないような加工をした画像をアップしているランサーもいるかと思います。

しかし背景に色やグラデーションが付いているJPEG画像をきれいに切り抜くのは手間ですし、ひとつだけグラデがついている画像や、画質が粗くてボケた画像を他のロゴといっしょに並べたらおかしくなるので、プレゼン資料(提案書)に載せることができません。

企業イメージに沿わないモックは逆効果

企業のロゴを作って最初にすることってなんでしょうか。

  • 名刺や封筒を作る
  • 請求書などの書類につける
  • 製品カタログ、採用パンフレットなどを作る
  • webサイトを作る
  • ノベルティを作る
  • オフィスのサインボード、サイネージを作る

色々あると思いますが、後半は優先度が下がると思います(すでにある場合は差し替えをしますが)。

会社の規模と異なったサイネージなどのモックアップ写真を見せられても、「うちの玄関こんなんじゃないしなあ…」となってあまりイメージできません。
特に今回のクライアント企業とまったく異なるイケイケIT企業の広々オシャレオフィスみたいな写真をつけられても、「職人が資材加工したり、工場の工事とかする会社なのに…」としか思えないわけです。

依頼内容にあるサイトURLから調べれば外観もわかるのにかけ離れたデザインを出すと、とくにクライアントをリサーチしたわけじゃないんだろうなということがバレバレになります。そうすると、「適当に作ったんだろうな」「他の会社にも同じようなの出してるんだろうな」「もしかして他の会社でボツになった画像を使いまわしてるのかな」と思ってしまうわけです。

発注者が見たいのはロゴそのものです。提案するロゴのデータは白背景で見やすいものがベスト。イメージ用のモックをつけるなら、企業イメージに沿ったものを。

連続大量投稿

ひとりで10案くらい作って投稿してくれる人がいるんですが、申し訳ないのですが全部見ていません

通知見てわ〜いたくさん提案きてるぞ!って期待して提案一覧を見たら、同じフォーマットのサムネイルがずらっと並んでいた時点で、「あ〜…同じやつか…」とガッカリします。

肝心のロゴが目に入ってこないのもありますが、凝った背景つきの同じフォーマットが並んでいると、ロゴ部分を見てもどれも同じに見えます

自分の提案用のフォーマットとかは言語道断で、あなたのブランディングをする場ではないのでロゴをしっかり見せてほしい。

もしそのフォーマットがロゴのイメージに合わせたものだとしても、あまり意味はありません。同じ背景、同じ雰囲気のサムネイルが並んでいれば、中身のロゴが違っていてもコンセプトは1種類にしか見えないからです。
それなら、そのコンセプトに沿った最適な1作品だけを提案してほしいです。
どれが「いっちゃんいいやつ」なのか、さっぱりわかりません。

しかもたいていそういう提案は、シンボルを変えただけでロゴタイプが全部同じだったりします。
「ワードロゴ」がほしいと言っているのにシンボルをあれこれいろいろ作られても、肝心のロゴタイプ部分に惹かれなければ手抜きの大量生産にしか見えないんですね。

「こんなに短時間でたくさん作れるなんてすごいスキル!」
「いろいろなデザインから選べて嬉しい!」
「このランサーさん仕事早そう!他の仕事も頼みたい!」
と思ってくれるという妄想をしているランサーもいるかもしれません。

妄想ですけど。

とくにコンセプトなどを気にせず見た目だけで判断する発注者の場合は、ずらっと並んだサムネイルをパッと見てそれがピンとこなければ、10案すべての詳細をひとつずつ開くこともないので、数打ちすぎて土俵に上がれないパターンです。

「見てもらえる入り口」まで考えないと、どんなに綿密なコンセプトを練って丁寧に説明文を書いても読んですらもらえません。

また、もうひとつのデメリット(リスク)としては、たくさん作れば作るほど、それも練らずに手当たり次第作っていると、ほかのランサーの提案と似通った案ができてしまう懸念があります。
「誰にでも思いつく凡庸なロゴ」と思われたり、「何かのパクリかもしれない」と思われたりします。
そうするとやはり、そのランサーの案から選ぶ意欲がなくなります。

提案が増えすぎると発注者は面倒臭くなって見なくなり、ちょっと似ている案が複数あるとスルーしてしまいます。ほかの提案とカニバることのないように、オリジナリティのある渾身の提案をしましょう。

なぜそうしたのか、理由を教えてくれない

「フォントの選定理由があると検討しやすいです。」とあえて書いたにも関わらず、ロゴタイプについて何も触れない提案が多く見られました。
触れてくれたコメントもありましたが、なるほどね〜!それはたしかにいいね〜!となるようなコメントはありませんでした。

既製品フォントではなく自分で作図しました

これはわかります。すごい。ありがとう。頑張ってくれてる。

全世界で愛されているフォントのHelveticaを使いました

そうなんだ。ありがとう。それって他の会社と同じようなロゴになっちゃうんじゃない?うちに合ってるの?

太い書体で安定感を出しました

太い書体ががっしりしたイメージなのは見たらわかるけど、太い書体いろいろあるけどなんでこれにしたの?太いのから適当に選んだの?

…という感じで、おそらく作った人の頭の中ではイメージができているし繋がっていることだと思うのですが、デザイン素人の発注者が見ても、「なぜそうしたのか」がわかりにくいコメントばかりでした。

もちろん丁寧に説明したところで知識のない発注者には意味がわからないかもしれません。でも、意味がわからなくてもちゃんと説明してくれて、「このロゴにはプロがよく考えた意味が込められているんだな」と想像できる案の方が、選びたくなります。
クライアントに提案するときにこっちで意味づけをでっち上げてプレゼンする苦労が無くなりますし…

説明が説明になっていない

前述のように提案の説明をしてくれていたとしても、そういうテンプレがあるのかなって思うくらい、みんな金太郎飴のようなコメントばかりで、発注者にとっては参考にならなかったりします。
下記はあくまでも例文ですが、だいたいこんな感じです。

  • ご依頼内容に沿って、シンプル&スタイリッシュにまとめました。
  • シンプルにデザインしていますので、様々なシーンで使用できます。
  • 長年の使用にも耐えうるシンプルなデザインにしました。
  • シンプルなので汎用性の高いデザインです。
  • ご依頼内容を念頭に置いて制作しました。
  • 信頼感、安心感を感じられるデザインを目指しました。
  • 老舗の信頼感を感じさせるシンプルなデザインにしました。
  • シンプルで視認性の高いデザインで制作しました。
  • 安定感があり、会社としての安心感を感じさせるロゴにしました。
  • 未来や創造をイメージし、デザインいたしました。
  • 先進的、永続を表現しました。

いやシンプルシンプルうるっせーわ!!

そりゃシンプルにしてくれってこっちが言ってるんだからシンプルにするのは当たり前です。
シンプルにしました。って言われても、そりゃそうでしょうね、としか思いません。
ご依頼内容に沿って〜、ご依頼内容を念頭に〜、と付け加えるのも、別に報告することに問題はありませんが、そうするの当たり前だし知りたいのはそこじゃないんですよね。
言われたとおりにやりました〜とだけ報告されても、みんな言われたとおりにやってるし。

信頼感を感じさせるデザインにしました

なんでこのデザインだとそう感じさせられるのかな?

安心感を感じさせるデザインにしました

このデザインのどこでそれを表現してるのかな?

未来を感じるデザインにしました

どこらへんが未来なのかな?

「なぜそれが良いのか」納得できる理由がないので、モヤモヤしたまま決め手に欠ける提案を見ていかなければならないんですね発注者は。

「こういう形状はこういう心理的効果があるためこのように表現しました」とか
「このアクセントで躍動感を出してここの曲線で前進する様子を表しています」とか
そういうのが知りたいんです。

発注者はデザイナーの脳みそを覗けません。
何をどれだけ考えてくれてそうなったのか、説明がないとわからないんです。
コピペっぽい文章で提案されるのと、ほんとうに今回の依頼のために考えてオリジナリティある説明文で提案してくれるのでは、雲泥の差があります。

「シンプルにしました。」
ではなく
「シンプルにするためにこういう要素を削りました。」

とか

「信頼感をイメージして作りました。」
ではなく
「信頼できる真っ直ぐな企業であることを、直線を使ったデザインで表現しました」

というふうに、

なんの目的のために、どうしたのか。

それを明言することで説得力のある説明になります。

発注者を騙し続けてほしい

「理由がないデザインはただのアートで、理由が説明できなければデザインしたとはいえない」とよく言われますが、そういう話ではありません。

仕事をとる、という意味では「センスあるデザイナーが自分のセンスで作りました!」が通用しないということです。
発注者にとってはそれがセンスあるのかどうかなんてわからない。
わからないのに「私のセンスを見て!」と言われても、選べない。

複数の案からひとつを選ぶ時、なぜ説得力のある理由を求めるのかというと、安心したいからなんですよ。
この案を選んで失敗したと思いたくないからです。
この案は本当に良いデザインなのか?実はダサいんじゃないのか?うちの会社にふさわしいのか?
それがデザイン素人の発注者にはわかりません。
わからないから、納得するための説明がほしいし、この案が最高なんだと思わせてほしいだけなんです。

無理やり嘘の説明をつけても意味がない、センスの領域はセンスとしか言えない、だから私のセンスで作ったんだ!というポリシーを貫くことを否定はしませんが、コンペで選ばれるかどうかでいえば選ばれにくくなるのは確かです。
他の人が納得できる説明をしっかりしていたら、センスで選べない発注者はそっちを選びます。

発注者は無意識に自分の選択が間違っていないと思いたいし、プロの提案に騙されていたいんですよ。

わからないものを説明もなく押しつけてきて自分を困らせる人と、わからないものだけどきちんと自分のために説明してくれる人、どちらを選びたいか?
ロゴを作ってもらって、今後もパートナーとしてデザインの仕事をお願いするかもしれない、そのときどんな人に仕事をお願いしたいか?という視点もあるんですよね。

コンペなんだから出てきたロゴそのものだけで品評すべき?

そういう意見もあるかもしれませんが、理想はそうでも現実は違います。
むしろコンペなのに「他人の提案に勝つ」という意識がないランサーが多いように思います。

良いものを作りさえすれば売れる、良いものを作りさえすれば選ばれる、そういう妄想は捨てましょう。これはビジネスです。

デザインで勝ち負けを争うのはおかしい、と思うのであれば、コンペには参加しないことです。コンペとはそういうものですから。
別の方法で仕事をとることを考えましょう。

発注者はどれにしたらいいか困っています。「この提案がどれだけふさわしいか」を伝えることで、発注者に無用な悩みをもたせず自分の提案を選ばせてあげるのです。

クライアントの社名を間違っている

これもうデザインとか提案内容と関係ないレベルの話になりますが、たとえば「トヨタ自動車」を「TOYOTA」としてしまうなどです。
「概要に沿ってTOYOTA様のロゴをデザインさせていただきました」みたいな。
資生堂から頼まれて、ロゴタイプが「SHISEIDO」だからといって、「SHISEIDO様のロゴをデザインいたしました」とか言わないですよね。
ブランド製品のロゴ作ってほしいって言われたのに「MAQuillAGE様のロゴを〜」とかいうおかしさに近いと感じます。

早とちり、勘違い、思い込みのメッセージを送ってくる

提案とは関係ありませんが、この人大丈夫かな?と不安になります。
この人のロゴを採用したあと、もし追加で何か依頼しなければならない仕事ができたらどうしよう…またこの人とやりとりするのか…今回は無事やりとりが終わったとしても…とかモヤモヤ考えてしまいます。

疑問に思うことがあったらまずひとこと「勘違いかもしれませんが、こういう状況でしょうか」とか「これってこういうことでしょうか?もしそうであれば〜」とか前置きをして質問しにいく方が良いと思います。

しつこい

提案後にメッセージを送りフォローする人も多いと思います。

提案はいかがでしたでしょうか?気になる点があれば修正しますのでご遠慮なくおっしゃってください。

お気遣いできる!
積極性があって助かる!
この案件に真剣!
修正も頼みやすい!
と思ってもらえると妄想しているランサーもいるかもしれません。

妄想ですけど。

1人で独立して会社作るんじゃないんです。
会社のロゴは担当者1人の気分でこれにする!と決められるものではありません。
担当者→担当部署の上司→経営陣と情報を上げていったり、経営陣でミーティングしたり、時間がかかるものです。
1日2日で採用案決められません。

たとえば金曜日に提案の締切だったり、修正依頼がきて金曜日に提出した場合、発注者がそれを目にするのは月曜日になると思ってください。そのあとさらに協議します。

木曜に修正案出したのに金曜になっても決まってないな〜
なんか動きないから日曜日に「いかがですか?」ってメッセしとくわ〜

って、やりすぎです。何でもやりすぎは禁物です。

それ見た発注者の心境は「しつこいわボケ黙って待っとけボケ」となります。
月曜日の朝にね。
会社の月曜日の朝って忙しいんですよ。まあ私は忙しくないけど世の中月曜日の朝は忙しい会社が多いんですよ。

コンペって何十人も、場合によっては何百人ものランサーが提案してるんですよ。
他のランサーも同様にあれこれいらんメッセしてきてたらどうなるか想像してみてくださいよ。
こっちは地雷クライアントと思われないために必死で迅速にレスしなきゃならないんですよ。
勘弁してくださいよ。
あなただけの相手してられないんですよ。
一日中ランサーズ眺めて過ごせないんですよ。

ランサーズじゃないコンタクト方法で直接見積り依頼がきているようなお取引先にそういうフォローしてまわるのは良いと思います。

しかしランサーズのコンペ中に「私の作品はいかがでしたか」って言われても、「いや〜今だれそれさんの案がいいかな〜って思っててさ〜君の案は無しね」とか「いや〜今だれそれさんの案と君の案で悩んでてさ〜社長は君の案がいいみたいなんだけど他の経営陣はみんなだれそれさんの案がいいらしいんだよね」なんて答えられるわけないじゃないですか。
結果出るまでお待ちくださいとしか言えませんよ。

今考えてるんだから待っててね。邪魔しないでね。迷惑だからね。ごめんね。

アピールしたいことは提案時のコメントに書ききって、選定期間中は不要不急の追い撃ちメッセージは控えましょう。なぜランサーズが選定期限を21日間もの長さに設定しているのか考えてみましょう。

そんなにいろいろ言うなら金払え

ごもっともです。

今回の報酬、当選者に5万円弱と次点に3,000円くらいしか払われません。
会社のロゴを作るのに5万円てなめてんの?と、デザイナーの私自身は思います。

でも適当にお小遣い稼ぎしたい人にはちょうどいいし、ロゴの重要性を理解していない企業がその適当なデザイナーに安く作って欲しいと思って依頼して適当な作品を買うのも自由です。

参加しなければ1分も無駄にすることはありません。
安いのにあれこれ注文をつけてくる発注者の依頼に応えなければ良いだけです。
参加するなら使った時間も労力も無駄にならないように徹底的に勝ちにいきましょう

発注者側もリスクがある

今までずっとデザイナーとして無茶振りされる側ばかり経験していましたが、提案を受ける側も大変なんだなとわかりました。

依頼を出すだけでも、完全非公開オプションつけるだけでコストは発生します。
それなのにまともな提案が揃わなかったら嫌だよなぁと思いましたね。

たぶん金額を上げたら上げたで、弾かなければいけないクオリティの提案もめちゃくちゃ増えるんですよね。そうすると結局「せっかく高い金額にしたし認定ランサーの提案にしておくか…」とかなってきて、もうロゴのクオリティとか提案の内容とかも関係なくなってしまうかもしれないなと。
発注者側からすると、いかに認定ランサーに目をとめてもらえて提案してもらえるかみたいなゲームになってきちゃう気がして、それは健全じゃないよなあと。

発注者側とランサー側の認識のミスマッチ、かなりあります。
それは業務に関する知識や経験の差だけではなく、ランサーズというサービス自体の情報(ガイドやヘルプ)が不透明だからという部分もあると思います。

せめて今回挙げたようなロゴの種類などは発注者とランサーで共通認識が持てるようなつくりになるといいのになと思います。
(たとえば依頼画面で全種類表示して選択されているものにマーカーをつけるだとか、やりようがあると思うんです)

発注者側のフローを経験してみて、今までそういう視点なかったなぁ、よかれと思ってやってたなぁ、と気づけたことがいろいろあってよかったです。