Webディレクターに限らず、ディレクターというもの全般的にそうかもしれませんが、現場でもネット上でも「仕事できない」「伝書鳩にもならない」「ディレクターいないほうがスムーズ」とか散々な言われよう。
もちろん仕事できるディレクターもあちこちにいると思いますし、私が制作側に立っているせいで特にそういう意見をよく目にするというのもあると思いますが、それにしても、ディレクターに対する不満って多くないですか?
私自身もそういう不満を持つことがありますが、なんでこんなにディレクターへの不満が多いんだろう、そんなにみんな仕事できないのかな、と。
もともとデザイナーの私ですが、最近エンジニア側の仕事も少しずつやるようになってきて、ちょっと自分の方向性を見失いつつあるのでこんなことを考えてました。
こうしてデザインスキルが落ちていき、プログラマとしても若い子に劣り、現場を華やかにする女子力もなく、将来は事務のおばちゃんになるんじゃないかと思っている
— natsumi_m31 (@natsumi_m31) 2016, 2月 22
器用貧乏っていうかさ
いろんなことやるだけやって何も1番になれないみたいな
そうなると各1番の人たちをつなぐ役割をするのがいいんだろうか
それはつまりディレクター?— natsumi_m31 (@natsumi_m31) 2016, 2月 22
で、こんだけあちこちで使えねえって言われてるディレクターになる経緯って、こういうことかなって思ったので個人的な意見ですが書いていきます。
ディレクターに向けられる矛先
まず、みんながディレクターに対して何を求めているのか?
ディレクターの仕事とは何か?
何ができていないのか?
ってことを再確認する必要があるかなと思います。
たとえば・・・
開発工数をきちんと見積もれること?
クライアントの要件を引き出せること?
その要件を正確に伝えること?
制作チームの意見をまとめること?
無理のないスケジュールをひくこと?
どれも当たり前のことのようですね。
内容は複合することも多いです。
たとえば開発工数が見積もれなければスケジュールがひけないとか、クライアントから言われたことだけをそのまま制作チームに伝えても細かい仕様が決められないとか。
では、この当たり前ができる人って、どういう人でしょうか?
開発工数をきちんと見積もれる人とは
プロジェクトの内容から、どのような機能があって、どのようなターゲットで、どのような画面があって、その画面数はいくつくらいで、それをデザインするのにどのくらいかかって、機能を開発するのにどのくらいかかるかを判断できないといけません。
もし、判断できないのであればデザイナーやエンジニアに必要な機能や画面を伝えて見積もってもらう必要があります。
要件を正確に伝えられる人とは
制作チームに工数を見積もってもらうために要件を伝えるとなると、その時点で実装する内容が決まっていないといけないわけですが、それはどうやって決めるのでしょうか。
当然、クライアントからの要望を聞き出してくるヒアリング能力が必要です。
クライアントが「こういう機能ほしいんだよね~」と言ったからといって、本当にその機能が必要かどうかわかりません。
本当に解決したい問題点は別のところにあって、クライアントが思いついた解決策を言っているだけかもしれません。
本当にその機能をつけて使いやすいか?
他のやり方で解決できないか?
そういったことも考えながら、クライアントに提案することも必要になってきます。
さらに、それが期待通りに実装できるのかどうか、技術的に問題ないか、そういったことも判断できないといけません。
もし、判断できないのであればデザイナーやエンジニアに以下略。
スケジュール管理ができる人とは
開発工数がきちんと見積もれたとしても、実際にプロジェクトにかかる時間はそれだけではありません。
クライアントに確認したり、素材や原稿をせっついたり、機能追加の要望が出てきたり、チーム内で人の入れ替わりがあったり、求めるスキルを持った人をアサインできなかったり、思わぬバグで対応に時間がかかったり、そういった問題を乗り越えたならどれだけ時間がかかるのか?
スケジュールのひき方がうまくなければデスマが生まれたり、そのせいで予算が足りなくなったりしちゃいますよね。
チームメンバーのスキルをある程度把握しておくことも必要ですし、人間同士ですからウマが合わなくてコミュニケーションに齟齬が生まれてるなんてこともあるかもしれないし、そういったところも含めて常に気を配って、開発がスムーズに進行しているかを把握しなければいけません。
もし、判断できないのであれば以下略。
彼らはなぜディレクターになったのか?
前述のポイントはディレクターの仕事のほんの一部です。
ほんの一部ではありますが、
クライアントやチームメンバーとのコミュニケーションが円滑にできること。
開発フローについて知識があること。
そのうえで工数の見積もりやスケジュール管理ができること。
これらができていないなと思われると、めちゃくちゃ叩かれます。
まあ、職種からいえば出来て当たり前なわけですし、できてなければ叩かれても仕方ないといえばないのですが・・・
では、なぜディレクターなのに出来ない人がそんなに多いのでしょうか?
また、それとは反対に、なぜ出来るディレクターの話はあまり聞かないのでしょうか?
私はこの理由について、「ディレクターになる経緯」にあると考えています。
デザイナーになりたい!
デザイナーを目指すぞ!
こういう人はたくさんいますね。
また、すでにデザイナーになっている人たちは、今後もデザインをやっていきたいと考えている人も多いのではないでしょうか。
ところで、ディレクターになりたい!と言っている人、見たことありますか?
まあ・・・ときどきいますね、ディレクターを目指します、というような人も。
で、その人の一番やりたいことは、ディレクターなんでしょうか?
将来の夢:Webディレクター
って人どのくらいいますか?
年齢を重ねたり、職場で新人の指導にあたったり、そういった経緯から開発作業よりも管理業務にまわることが多くなり、今後はそういった仕事をしていく、というパターンは多そうですが、最初からディレクターになりたくてディレクターになるための勉強をしている人、というのは、あまり見たことがありません。
また、ディレクションを担当する人がいないので、営業さんがそのままディレクターとして立ち回るなんていう場合もありますね。
つまり、もともとディレクターとしての能力に長けていてやる気満々でディレクションをしているディレクターよりも、なんとなく結果的にディレクターになった人というのが多いのではないかと思うのです。
真剣にディレクター職を全うしている人もいますが、そういう人は仕事できないディレクターとは呼ばれないでしょう。
そして、そういう人はもともと制作をやっていて制作のことがわかっている人だったりします。
仕事できるディレクターが増えないのはなぜか?
向き不向きに関係なく誰かがやらなければいけないのでディレクターになった、させられた、というディレクターが多ければ、みんなの期待に十分こたえられる人の数は少ないでしょう。
それだけ他の職種からの不満は大きくなります。
デザイナーやエンジニアでディレクターへの不満を吐き出している人は、「ディレクターはこうあるべき」という姿を思い描いていますよね。
こういうやり方は良くないとか、もっとこうしてほしいとか、良いディレクターの条件を知っていますよね。
そういう人がディレクターになっていけば、自然と仕事できるディレクターは増えると思うんですよね。
でも、デザイナーやエンジニアは、ディレクターになろうとしないんです。
デザインをもっと突き詰めたいとか、クライアントと接するのが嫌だとか、管理業務が楽しくないとか、理由はいろいろあるでしょうが、「ディレクターのするべきことわかってるし、開発のことも理解してるし、自分が一番向いてるから自分がディレクターやるわ!」っていう人、そんなにいないんですよねぇ・・・
自分にやらせてくれればやるけど自分はデザイナーの仕事があるからできない?
会社から業務命令が出なければ勝手にディレクションできない?
ではあなたは、「自分にやらせてください」というアピールはしたということでしょうか?はたらきかけているのにディレクターになれないのでしょうか?
いいえ、きっと、ディレクターになる気はないのでしょう。
もしその気があるなら、そういう人は、前述の「ディレクターを目指している人」になっているはずです。
ディレクターに必要な素養を持っているあなたが、「自分のほうがうまくできる」と口だけで結局は実行しないのであれば、仕事できるディレクターは増えません。
あなたがそのポジションに立ってくれなければディレクターが一人足りませんので、やりたくないけどやらされる人、ただ業務命令でその立場になっただけの人、が一人増えます。
こうして仕事できないディレクターが増えていくのですね。
自分と異なる職種に対して協力的でなければチームはまわらない
結果的に、開発のことをあまりわからないディレクターが生まれました。
開発バリバリできてディレクションもできるあなたがディレクターにならずにいるため、それより開発についての知識や経験の劣る人がディレクターになりました。
だから、「ディレクターやるなら作業フローくらい理解しとけよ」「そんなめちゃめちゃな工数で見積もり出すなよ」というのは酷なのです。
あなたたちよりわからないのは当たり前なので、ディレクターになっちゃった人に教えてあげるしかありません。
「もっとユーザーのこと考えるべき」「ちゃんとヒアリングしてこいよ」というならば、ディレクションもできるあなたたちが打ち合わせに同行できるように掛け合いましょう。
そしたら、「これは技術的にできません」とか「○人日かかりますね」とか「だいたいおいくら万円になりますね」とか、その場で伝えられますね。
ディレクターが伝書鳩になって持ち帰ってきてあなたに相談する必要がなくなります。
普通は、自分たちがやらないことをディレクターがやってくれているので、不満があるなら自分がやるか、ディレクションもできるあなたがやり方を教えてあげたらいいんじゃないでしょうか。
まとめ
私も、自分がディレクションをやったほうが捗るだろと思うことはよくあります。
しかし、ディレクターをやりたいか?と聞かれたら、それよりデザインやプログラミングのほうが楽しいな、と思います。
で、その私がディレクションやらないから・・・他の人がやってるわけですよね。
もしデザインしかやりたくないなら、自分のデザイン業務に専念できる環境を作ってくれているディレクターの存在に感謝しないといけません。
でも、私は・・・ディレクターになるのも一つの道かな、と思っています。
自分がやりたいやりたくないで選ぶより、適性がある人がアサインされたほうがプロジェクトはうまくいくでしょう。
ただ、やりたくない仕事を無理にやっても、成果ってなかなかあがらないだろうし、難しいですね。
ディレクターって・・・
・開発者の能力がある
・一般事務の能力がある
・営業の能力がある
これらすべてを求められて、いったいお給料はいくらもらえるの?
具体的な数字がないから評価もしてもらいにくい。
転職するときも、わかりやすいアピールポイントがない。
そんな状況で頑張って仕事していても、もしちょっとでもうまくいかないとデザイナーやエンジニアから罵倒されるわけですよね。
それを考えると、なりたくないかなぁ・・・あ、うん、やっぱり、良いディレクターが増えなくて仕事できないディレクターが多い理由は、私たち自身にありそうですね。