ウェブデザイン技能検定2級(合格率17%の回)に合格した時の話

ウェブデザイン技能検定2級(合格率17%の回)に合格した時の話

ウェブデザイン技能検定(2級)を受検して合格し、「2級ウェブデザイン技能士」となりましたので、これから受ける人の参考になるように書いておこうと思います。

なんで受けようと思ったかっていうとですね、うちの職場でデザイナーって私一人しかいないんですけど、エンジニアの若い子がデザインに興味あるって言ってて、それで聞かれたんですね。

「ウェブデザイン技能検定などの資格はお持ちですか?」
「持ってないよ」
「受検したことはありますか?」
「ないよ」

おいまてよ、受検したことあって資格持ってなかったら落ちたってことになるだろーが。失礼な。受検したことあったら資格持ってるっつーの。失礼な。
って思ったのと、実際資格持ってもいないのに「資格なんて意味ないよ~」って言ってても負け惜しみみたいだし根拠もないので、とりあえず取るだけ取っておくか~という気になったわけです。

デザインやりたきゃ資格の勉強するより何か作れ!
と言ってはおきましたけど、試験勉強が無駄になるってわけでもないので、そこはWebデザインの先輩として参考になる持ちネタがあってもいいんじゃないかなって思ったので受検しました。

ちなみに合格証書は合格発表の翌日~2日後くらいには郵送で届いていました。
とはいえ郵便事情などもあり必ずしも到着するとは限りませんから、就職とかで企業に提出とかしないといけない人は注意してください。

ウェブデザイン技能検定とは

今のところウェブデザイン系の資格では唯一の国家資格らしいです。
といってもWeb制作界隈で知名度があるかっていうとそうでもないのが現状。

そもそも「デザイン」と名がつくということは、「デザイナー」が持っていそうな資格ですが、実際のところ企業がデザイナーを採用するときの基準って、「何が作れるか」が重要なので、資格を持っているかどうかよりもポートフォリオの方がよっぽど見られます。
「実務経験ないしあれもこれもできないけど資格持ってます!」なんて人はお払い箱の世界です。

1級の場合は受験資格に実務経験が含まれてきますが、これもWeb制作会社にいたかどうかとかじゃなくて、「自分でWebサイト作ったことある」程度でも実務経験として数えて良いらしいので、1級持ってる人なら安心かっていうとそうでもなくて、成果物のクオリティは担保されません。

今からWebデザイナーを目指す人は、あくまでも「ソフトがどのくらい使えるか」「何が作れるか」が大事だっていうことを忘れないでください。

さて、じゃあこの資格を持っていても何の意味もないのかね?っていうと、意味がないこともない。
この資格を持っているということは、少なくとも試験に出題される程度の課題はこなせるわけですから、ポートフォリオも何も持っていなくて、どこそこのスクールに通いましたっていうだけの人よりも、実力が証明されています。(ポートフォリオちゃんと作ってる人には勝てないけど)

あとは、この資格を持っていると、ホームページや名刺などに「2級ウェブデザイン技能士」というふうに肩書をつけることができます。
Web制作系ではWebデザインなんてできて当たり前のことなので肩書なんかどうだっていいんですが、それ以外の企業でWeb制作も請け負いますよ~みたいなところでは、箔付けに一役買うかもしれませんね。
地元の小さい団体を相手に少額で制作を請け負ってたりするようなところでは、「うちは国家資格持ってるWebデザイナーがいますよ」って言えるわけなので、多少強味になるかな、って感じです。

今のところ、Webデザイナーになるなら取得しなきゃ!っていうような資格ではないですね。
それは受検者数や合格率にも表れています。

受検資格

今までの合格者数などはここで見ることができます。

1級の合格者って、全国で50人くらいしかいないってことですね。
そもそも受検者数が少ないです。
これは知名度が低いことももちろんですが、受検資格を満たしている人の絶対数が少ないということもあります。

2022年1月29日追記
すでに当時の会社は前々職になってしまいましたが、現職でウェブデザイン技能検定の話題が出たもので、久々にサイトを確認したところ、ようやっと1級の累計合格者が100人を超えたようです。

そして受検資格については次の通りです。

3級は誰でも受けることができます。
2級は、3級を持っている人、またはWeb系の勉強ができる特定の学校を卒業した人、どちらも満たしていない場合は、2年以上の実務経験がある人、となっています。
この時点で、たとえばこれまでそういった学校に通っていなくて、無関係の仕事をしていて、今からWebデザイナーになりたい!資格とろう!って思った人は、3級合格してからじゃないと2級は受けられません。
それか、アルバイトでもなんでもいいので実務経験ができるところで2年がんばるしかありませんね。

1級はもっと大変です。
必ず実務経験が必要です。

2級に合格していたとしても、合格後2年の実務経験が必要。
2級を持っていない人、または持ってるけど実務経験が2年未満の人は、(協会が認めた)高度職業訓練を修了していなければ受検できません。
(協会が認めた)大学を卒業している人なら、卒業後3年の実務経験。
それ以外の(協会が認めた)職業高校、短大、高専、高校専攻科、専修学校、各種学校卒業又は普通職業訓練を修了している人ならば、卒業後5年もの実務経験が必要です。

じゃあ、そういった学校を出ていなくて、2級も持ってないよって人が受けたい場合は…
7年の実務経験が必要となります。

( ゚д゚)ポカーン

ちなみに私は実務経験が7年を超えてるので2級を持っていなくても1級は受検可能です。
今から頑張るんだったら、2級を取得してから2年実務経験、っていうのが一番の早道ですかね…

1級は実技と学科の日程が分かれていて、先に学科に合格していないと実技を受けることすらできません。
(;^ν^)ぐぬぬ…

というわけで、今から目指すんだっていう人は、とにかく実務経験期間を稼ぐために早め早めに行動しておきましょう!

合格率

その回によって合格率は非常にまちまちですが、さきほどの資料からすると、たとえば2級では毎回約30%~60%くらいになっています。

しかしそんな中、今回(平成28年度第1回)の2級の合格率は、なんと約17%
す、少なーっ!

その回の出題内容に大きく左右されてしまうということがわかります。

出題の傾向

過去問を見てみると、実技はここ数回同じ内容が出題されているようです。
普段から実務でやってる人や、過去問の課題を練習した人であれば、簡単にこなせる内容でしょう。
試験時間は2時間のタイムアタックですが、はっきり言って30分くらいでできてしまうようなものです。
(きちんと見直したり、ある程度きれいに作ろうとすればもうちょっとかかります。私は途中退室して後からミスに気づいたら嫌なので最後まで残ってチェックしました)

今回、予約フォームを作る課題で、明らかに問題文の指示がおかしいところがあったため、試験官に「これは誤りではないですか?」と質問しましたが、「問題についての質問は受けられません」とのことだったので、しぶしぶ問題どおりに実装しました。
後日検定のページで出題に誤字があったためどの回答でも正解として加点した、というお知らせが出ていました。

私以外の人たちが誰一人質問していなくて、さっさと途中退室した人たちもいたので、みんな素直に問題文どおりやってるのかな~って不思議でしたが、これがもし実務でこんな仕様が来てそれ通りに作って納品なんかした日には大問題になるぞ…って感じでした。
何も言わずにやって減点されるのも嫌なので、おかしいと思ったらとりあえず指摘はしておいた方がいいです。
別にそれで落とされたりはしないので…

さて、問題は学科です。

学科は過去問があるとはいえ、見たことない問題が出題されることもあります。
また、それまでの出題の傾向と変わってしまう場合もあります。
これはちょっと油断ならないです。

ウェブデザイン技能検定という名前からすると、ビジュアルデザインに関する問題が出るのかなってイメージしてしまいそうですが、HTMLやCSSに関する問題だけではなく、jQueryやPHPのコードも出題されています。
HTML5の要素の仕様なども、デザイナーでも普段から勉強していないと「そういえばこれは知らない」ってのが出てきます。
HTMLとCSSくらいしか書けない人、画像処理ソフトで画面のデザインしかできない人、そういういわゆる「デザイナー」の人にはちょっと厳しい問題が含まれています。

今回でいうと…

第8問のJIS規格
2016年3月に改正されたばかりの規格について、しかも普段気にしてないようなJIS規格を出題しますかね…!

第12問のaudio要素の仕様
ブラウザがちゃんと対応してないから実務でもほとんど使わないよ!みたいな要素。

第21問のJSによるカラーコード演算
こんなの自分で書かないでしょ。
でも、フルカラーLEDのグラデーションに使えそう…φ(..)メモメモ

第23問のPHPとJSON
コードの内容がなんとなくわかったとしても、JSON形式を知らないと躓く二重構造の罠。

第33問のApacheのコマンド
DIGEST認証のユーザ管理に用いるコマンド、htdigest。
あれ、今受けてるのって基本情報技術者試験だっけ…?

第40問のcanvas描画
実務で書いたことあるからわかったけど、こういうコード自分では見たこともないデザイナーさんも多いのでは?

WebGLだの、ランサムウェアだの、デザインと直接関係なさそうな話題も取り入れられていて、ある種正しい意味での「Webデザイン」、Web制作に関して広い知識を求められている気がします。
今回の合格率17%というのも致し方ないかな…と。

実技のみ合格できた人が58人もいるのに対して、学科のみの合格者が2人しかいないっていうのにも表れてますね。
(以前合格済みのものは免除されるので必ずしも片方落ちてるってわけではありませんが)

で、1級になるとさらに実技ではテーブルの正規化や、PHPとMySQLを使った実装などが出てきます。
もう、見た目のデザイン技能じゃないんですよ。

まとめ

検定の名称から感じるイメージと出題内容が違いすぎて、デザインやる人以外は見ないだろうし、デザイナーになりたい人にもハードル高いし、受検者はなかなか増えないだろうし取得者も少ないわけで、知名度もそりゃ上がりませんよね…
とはいえ一応国家資格ですから、検定の価値を高めたいと思えば出題内容を易しくするわけにもいかないでしょう。

しかも、2級で18,500円、1級だと32,000円という受検手数料が痛い。
これはもう、一発合格目指したいですもんね。
雰囲気知りたいから試しに受検~って気軽に受けられないし。
前述の受検資格の狭さと相まって、1級取得者がなかなか増えないでしょう。

現状でいうと、「誰得…?」としかいえない状況なのですが、Webデザイナーにとって指標になるようなわかりやすい資格がほかにないのも事実。
むしろ最近の傾向としてはWebデザイナーが画面のデザインだけできればいいわけではないぞっていう風潮なので、そういう意味では幅広い問題が出るほうが、試験勉強自体が意味のあるものになるのでいいかもしれませんね。